Special - Interview

沖縄で話題のスリーピース・バンドcainoが考える、これから目指す先

caino(カイノ)

沖縄のロック・シーンの中で、今注目を集めるcaino(カイノ)は、高良豊(ヴォーカル、ギター)、田盛安一(ベース、コーラス)、兼島紳(ドラムス、コーラス)というスリーピース・バンド。高良のハイトーン・ヴォイスを軸に、スケール感のあるボーダレスなロック・サウンドを生み出している。2015年12月にリリースされたファースト・ミニ・アルバム『mahoroba』はじわじわと売れ続け、タワーレコード那覇リウボウ店では沖縄のミュージシャンによる2016年の年間売上で3位を記録した。 多数のバンドがうごめく沖縄のオルタナティヴ・ロック・シーンにおいて、なぜcainoだけが突出しているのか? 2017年初のライヴだったという、東京でのマンスリーライブイベント『exPoP!!!!!』に出演した翌日、那覇に到着した3人を直撃した。

月2本以上のライブはやらない

―東京でのライブは、いかがでしたか?

高良:去年の5月以来、通算7回目くらいの東京でのライヴだったんです。そのなかでも、かなりいいライヴになったと思います。5バンドいるなかで僕らはオープニングアクトだったんですが、最初からお客さんも結構集まってくれて、能動的に楽しもうとしていることが伝わってきました。

©近藤みどり @exPoP!!!!!

©近藤みどり @exPoP!!!!!

田盛:出演したバンドもそれぞれ個性があって、ライヴに対する意識も高かったですね。

高良:僕、いつもライヴ終了後にツイッターなどをエゴサーチするんですよ。今回はとても反応が良かったです。いろんなトラブルはあったんですけどね(笑)。

兼島:友達も観に来てくれたんですが、ふだん褒めないのに今回は褒めてくれましたし(笑)。とにかく設備を踏まえ、ライヴがすごくやりやすかった。色々収穫がありました。

―cainoを知っているオーディエンスも結構いたんですか?

高良:以前にもライヴを見てくれたことのある方や、ミュージックビデオは観たことがあるという人は少しいましたけれど、初めて見る人がほとんどだったと思います。

©近藤みどり @exPoP!!!!!

©近藤みどり @exPoP!!!!!

兼島:だから、今回はCDを買ってくれる人も多かったですね。

―東京はともかく、cainoは沖縄でもそれほどライヴはやっていないと思いますが、それには理由があるんですか?

高良:ライブは、月に2本以内という縛りでやってるんです。それぞれ別の仕事をやっているからというのもあるんですけど、いつでも観られたら有り難みがないと思うんです。それよりも、一本一本のライヴを大切にやって、お客さんに楽しんでもらいたいということを考えています。

©近藤みどり @exPoP!!!!!

©近藤みどり @exPoP!!!!!

今後のバンドは営業力も必要

―先日RQ+でも記事にしたんですが、2015年の年末に発売されたアルバム『mahoroba』は、タワーレコード那覇リウボウ店では2016年の年間売上3位でしたね。

兼島:実はまったく知らなかったんです。CDが売れた実感もないし。

高良:気が付くいたらこうなってたって感じですね。実際、何枚売れているかわからない(笑)。

兼島:でもとくにやってることはかわってないし、急に動員が増えたとか、大きなイベントにでたりしたわけでもないのに不思議。

―きっと、沖縄のロック・ファンのなかでは、しっかりと認知されているということですよね。

高良:それはあるかもしれない。ライヴ会場で声をかけられることは増えたから。

―いずれにしても、3位というのはひとつの結果でもありますよね。そこまで結果を出せた秘訣とかってありますか?

高良:貪欲さじゃないですかね(笑)。音楽性だけではなく、打ち上げなどで生まれるちょっとした企画に、いかに自分たちを滑り込ませていくか、ということを意識しています。自分たちで自分たちを売り込んで、チャンスを掴んできたというのは事実です。今後のバンドは営業力も必要じゃないかなって。

―たしかに、今のミュージシャンには自分を売り込んだり、金銭的な感覚を持つことは大切ですよね。

高良:大きな事務所に所属していればマネージャーがやってくれるんだろうけど、僕らのようなバンドは自分たちでやっていかなきゃいけない。こういった前のめりの姿勢や、お金を稼ぐという話をすると、よこしまなイメージで見られるかもしれないけど、でもそれって、やる気があるからだし、自分たちの音楽をアピールしていきたいからこそ。バンドマンはそういうことを恥じたり悪びれたりせずに、もっと前に出していくべきだと思います。

田盛:でもこういうことって、東京のバンドは当たり前にやっているんですよ。プロではなくアマチュアでも意識が高い。それは県外に行くといつも感じますね。

高良:チャンスは実力だけで掴むものじゃなくて運も大切。でも運が巡ってきても、その時に、いつでも飛び込める体制は常に作っておくべき。その運はどのバンドにも来るから、とにかく掴まないとだめですね。僕の尊敬するギタリストの言葉なんですけど、「わからんけどやってみる」というのがあって、とにかくがむしゃらにやるってことふが大事なんです。失敗したら失敗で笑われればいい。でもやらないと成功には縁がない。運も実力のうちだというのは本当だと思います。

左から、兼島紳(ドラムス、コーラス)、高良豊(ヴォーカル、ギター)、田盛安一(ベース、コーラス)

左から、兼島紳(ドラムス、コーラス)、高良豊(ヴォーカル、ギター)、田盛安一(ベース、コーラス)

「沖縄にはcainoがいるじゃん」といわれる存在になりたい

―今後、県外からも頻繁にライヴのオファーが来るようになったら、拠点を東京などに移すとかは考えていますか?

高良:個人的にはチャレンジできるんだったらやってみたいというのはありますね。そういう意味では野心はあります。沖縄にいる自分の周りのバンドよりも、その気持ちは強いんじゃないかな。ただ、売れたいというよりも、続けていきたいというのがあるんですよ。そうするには、ちゃんとバンドでお金を稼がないといけないとも思います。

―逆に、沖縄を拠点にしていることのメリットってなんですか?

田盛:今回のように東京へ行った時に、「沖縄から来てくれた」といわれて注目されることはあるかもしれないですね。

高良:あと、対バンしたバンドに「沖縄で一緒にライヴやりませんか?」といったときの食付きがめちゃくちゃいいんです。みんなギャラは少なくても沖縄でライヴをしたがっている。

―では、沖縄と東京では、音楽シーンに差は感じますか。

高良:それはかなりありますよ。沖縄は情報がすぐに入ってこないので、今の東京で主流になっているようなバンドは意外に少ない。沖縄で活動するのであれば間口を広げるためにも、そういった音楽を沖縄に持ってきたいなって思う。僕ら『オトナリサン』というイベントをやっているんですけど、それは僕らが紹介したいと思っているバンドを県外から呼ぶんです。そうすることで、自分たちが新しい音楽の発信のド真ん中にいられる。そして、新しい音楽が認知されればされるほど、自分たちの音楽が聴かれやすくなるんじゃないかなって思う。そういう観点から、音楽シーンを意識的に活性化していきたいですね。

―今の沖縄のシーンに関しても考えることはあるんですか?

高良:もっとこうなればいいなっていうのはありますね。若いバンドが、今を感じさせない古い音楽をやっていることが多いんですよ。別に古い音楽が悪いわけではないんだけど、音楽ってどんどん新しくなっていくじゃないですか。それなのに、時代が止まっている。新しい時代を切り取っていかないと、バンドも成長しないでしょ。ただ、沖縄でも最近のメロコア・シーンを見るとかなり活性化しているから、そこは面白いところではありますね。

caino

―今後の目標とかってありますか?

高良:単純に沖縄県内でトップになりたいですね。

兼島:「沖縄にはcainoがいるじゃん」といわれる存在が理想です。今は沖縄のバンドというと、MONGOL800、HY、ORANGE RANGEという3バンドの名前が挙がると思うんですけど、そこにcainoも加わりたい。

高良:いまはビッグマウスにしか聞こえないかもしれないですけど、いつか実現させますよ。

兼島:偉そうにいっているけど、僕らは沖縄でもかなりニッチなバンドですから(笑)。でも、だからこそチャンスはあるんじゃないかなって思います。

caino(カイノ)
caino(カイノ)

Profile

caino(カイノ)

メンバーは、高良豊(ヴォーカル、ギター)、田盛安一(ベース、コーラス)、兼島紳(ドラムス、コーラス)。2000年に結成され、自主制作で2枚のシングルと1枚のフル・アルバムを沖縄県内のみで発表。2015年12月にリリースしたファースト・ミニ・アルバム『mahoroba』で大きく注目を集めた。自主企画でのライヴ以外にも、水曜日のカンパネラや9mm Parabellum Bulletなどの沖縄公演をサポート。叙情的な歌詞や、UKロック、エモ、ポスト・ロックといったエッセンスを取り入れたボーダレスでポップなサウンドで人気を博している。3月20日にはGUSUKU ROCK FES'17に出演。今夏2作目のミニ・アルバムを発表すべく鋭意レコーディング中。
http://caino.jp

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