Special - Column

宮沢和史に訊く、沖縄・夏の風物詩エイサーの楽しみ方

沖縄の夏祭りといえば、なんといってもエイサー。高らかに太鼓を響き渡らせながらダイナミックに踊る姿は、見るものを高揚させ、凛々しくかっこいい。 沖縄旅行に来れば、その光景を見る機会も多いだろう。ここでは、沖縄で「世界エイサー大使」にも任命されている宮沢和史と一緒に、エイサーの現場風景を周り、その魅力に迫る。

沖縄の夏の風物詩・エイサー

夏になると、沖縄の各地でエイサーが行われている。8月上旬には那覇の国際通りでは、すっかり恒例となった『1万人のエイサー踊り隊!』が実施された。沖縄在住の方なら、ご覧になった方も多いことだろう。

01

他にも、この時期は各地で夏祭りが行われ、そこでは必ずといっていいほどエイサーが見られるし、運が良ければ道ジュネー(エイサーの演舞をしながら町中を練り歩くこと)に出くわすこともある。

02

そんな夏祭りのメインイベントを、エイサーをこよなく愛する宮沢さんはこう語る。

宮沢:沖縄に来ると、いつも祭りが年間行事にしっかりと組み込まれていると感じるんですが、エイサーはそういう意味ではまさに夏の風物詩ですね。男も女も演じる者にとっては、晴れ舞台といえるでしょう。

03

念仏踊りがもとになったといわれるエイサーは、本来は盆の時期にご先祖様を迎える行事。もともと手踊りが主流だったそうだが、現在は太鼓を叩きながら演舞するのが一般的だ。大規模なグループになると100人以上が乱舞する。また、沖縄では各地域に根付いた「伝統エイサー」が演じられる一方で、現代的な感性を取り入れた「創作エイサー」の各団体が盛んに活動している。

いずれにせよ、夏がもっともエイサーを見られる季節であることに間違いない。

沖縄は音楽家にとってパラダイス!?

04

この季節になると、各地での夏祭りやイベントに向けて、どこからともなく太鼓の音色が聞こえることも多く、路上での練習風景に遭遇することも珍しくない。

05

今回は、そんな練習風景を覗きに、宜野湾市の喜友名(きゆな)にある公民館に足を運んだ。公民館前の路上で集落全体に太鼓の音色を響かせ、真剣に練習する光景を見ながら、宮沢さんはこう語る。

宮沢:こういうところが、僕が沖縄を好きな理由でもありますね。ブラジルやキューバもそうなんだけど、季節によっていろんな祭りの音が街角から聞こえてくる。祭りがあるということは、その前に練習しなきゃいけないし、多少騒がしくても誰も怒らないという環境は、僕たち音楽家にとってはパラダイスですよ(笑)。本来そうあるべきだと思うんだけど、都会ではすぐ苦情が来るし出来ないじゃないですか。だから、沖縄はとても健全な気がする。

喜友名の青年会による伝統エイサーは、およそ50年の歴史を持つという。近頃では青年会の存続を危ぶまれる地域もあるようだが、喜友名では毎年コンスタントに30名ほどがエイサーに参加する。なかには、県外からの帰省に合わせるメンバーも珍しくはない。

06

そして、6月に入ると旧盆に向けて、連日公民館前に集まり、夜な夜な練習が行われるのだ。もちろん、地域の人々も理解しているため、苦情などは一切ないといわれる。

07

宮沢和史がエイサーに挑戦!?

この日は8名の青年が練習に参加しており、夕闇に覆われた喜友名の集落では、太鼓の音色や掛け声が響いていく。宮沢さんはその様子を見ながらこう話す。

宮沢:こういった青年会のように地域のコミュニティーが、形骸化せずにしっかり残っているというのは、清々しいし羨ましいですね。そこに組み込まれている喜びというものも、きっとあるんだろうなと。歴史の流れの中に組み込まれて、それを子どもたちがまた見て途絶えないというのも、すごく自然なことなんですよね。

08

宮沢:僕もエイサーからインスピレーションを受けることは多いですよ。最初に “7月(しちぐゎち)エイサー”という曲を聴いた時は鳥肌が立ちましたね。うたむち(イントロ)やお囃子(おはやし)がなぜこういう風になっているのかを追求していくと、音楽家としてはとても勉強になるんです。そのうちエイサーの曲を書くようになったんですが、「エイサーとはなんぞや!?」ということをしっかり考えながら作るようにしています。

09

宮沢:数年前に“シンカヌチャー”という曲、去年は“The Drumming”という曲を作ったんですが、これらは一年を通して色々な場面で演舞される「創作エイサー」と呼ばれるエイサー用に作った曲です。伝統を壊すことなく、基本は踏まえた上で、現代らしさを出し、子どもたちが踊ってみたくなるものを目指していて。結果、今までにないものができたんじゃないかなと思います。

10

そんなことを語りながら見学していると、「太鼓を叩いてみませんか」と声をかけられ、宮沢さんも実際にチャレンジ! エイサーの楽曲を作っているとはいえ、実際にやってみるのは初めて。最初はパーランクーというタンバリンくらいの小太鼓を叩き、その後に大太鼓に挑戦する。

11

たんに叩くだけでなく、振付があるので簡単にはできない。しかし、空手の型から影響を受けているといわれるエイサーの演舞は、ピタッとはまると非常にかっこいいし、見ている方も気持ちいい。

12

最初はぎごちなかった宮沢さんも、「難しいなあ」とか「明日筋肉痛になりそう(笑)」なんていいながら、徐々に決めのポーズが様になってきた。やってみてあらためて知ることだが、エイサーは簡単にできることじゃない。だから、こうして日々練習を続けているのだ。

13

「伝統エイサー」と「創作エイサー」の両輪が必要

ここ喜友名のエイサーは、基本的には代々伝わっている楽曲と振り付けを守りながら続けているのだが、9曲あるレパートリーのうち、1曲はメンバーの希望によって最近付け加えられた「創作エイサー」だという。

宮沢:「伝統エイサー」は、どうしても様式を守らなきゃいけないものなんだろうけれど、喜友名のように今年はこの曲をやってみようといって根付いたら、それが何年後かには伝統になって行く。考え方のスパンが長いですよね。それがまたいいところだと思うんですよ。

14

宮沢さんは、先述の通り「創作エイサー」を元に楽曲制作をしているが、伝統エイサーに対しても大いに敬意を払っている。だからこそ、エイサーのことをもっと知りたいとも話す。

宮沢:毎年『世界エイサー大会』というイベントが行われているんですが、そこで審査員をさせてもらっています。だから、様々なタイプのエイサー団体の演舞を観るんですが、伝統を守りながら行っている「創作エイサー」もあれば、これまでにないぶっ飛んでいる「創作エイサー」もある(笑)。ただひとつ言えることは、「伝統エイサー」と「創作エイサー」の両輪が必要だということ。「伝統エイサー」だけだと、子どもたちや若い人が時代によっては離れていく可能性があるけれど、「創作エイサー」ならやってみたいという人も多い。様々な場所で「創作エイサー」が盛んに行われることによって県外や国外の方々にエイサーが広く認知され「伝統エイサー」も自然と活気付いていく。そうやってお互いいい効果があると思うんですよね。

最初は緊張していた青年会のメンバーも、宮沢さんが体験参加することによって徐々に打ち解け、最後は談笑しながら和やかな雰囲気になっていった。

15

宮沢:体験できるっていうことはあまりないから、こういうことが日常的にあるといいですよね。見ているだけでも楽しいけれど、少しでもやってみるとさらに楽しい。県外の人が体験できる機会がもっとあってもいいかなと思います。

今年も多くのエイサーまつりが開催!

創作エイサーはオールシーズン見ることができるが、伝統エイサーに関してはこの時期ならではの旬のもの。8月26日〜28日には伝統エイサーの総集編とでもいうべき『沖縄全島エイサーまつり』や、9月2日〜4日には琉球最古といわれるエイサーが見ることができる『うるま市エイサーまつり』も行われる。

2016年の夏、ぜひあなたも、迫力満点のエイサーを生で感じてみてはいかがだろうか?

16

Editor’s Choice

編集部のオススメ

Facebook

ページトップへ戻る