Special - Interview

東京は経由しない。沖縄から世界を目指す、新星ラッパー、R'kuma(レオクマ)インタビュー

R'kuma

最近大きな盛り上がりを見せる沖縄のヒップホップシーン。その中で、あきらかに異色の存在なのがR'kuma(レオクマ)だ。YouTubeにアップした動画が160万回を越える再生数で注目を集め、BSスカパー番組『BAZOOKA!!!』の名物コーナー、第9回『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』に出場し、1回戦敗退にも関わらず強烈なインパクトを与えた。その後も、人気ラップバトル番組『フリースタイルダンジョン』への出演や、数々のイベントでのパフォーマンスで話題を呼んでいる。
とはいえ、まだCDなどといった形でリリースした作品は一切なく、今のところYouTubeの動画とライヴでしか彼のラップは体験できない。誰にも真似のできない独得のニュアンスで繰り出すフロウを武器に活動を続けるR'kumaは、沖縄からどのような展開をしていくのか。RQ+が独占インタビューに成功した。

きっかけはストリートへの憧れ

—今、19歳なんですよね。

R’kuma:はい、1997年生まれです。沖縄の嘉手納町で生まれ育ちました。

—ヒップホップに興味持ったきっかけは?

R’kuma:最初はストリート文化への憧れですね。おしゃれでイケてる先輩がいて、すごく影響を受けたんです。最初は洋服買ったりBMXに乗ったりしてたんですけど、その先輩の友達でラップをやってる人もいて、高1になったばかりの頃にノリで「お前もラップやってみたら?」っていわれて始めたのがきっかけです。その日から家に帰ってリリック(歌詞)を書き始めました。

R'kuma

ー同級生でそういう友達はいたんですか?

R’kuma:いや、いなかったです。周りはヤンキーばっかりだから(笑)。でも、公園でひとりでBMXの練習していたら知らない奴らが集まってきて、それで一緒に洋服買いに行くような仲間が一気に広がったんです。それまでは、嘉手納にはまとまったストリート・カルチャーがなかったんですよ。

—じゃあ、先駆けだったんですね。

R’kuma:そうですね。それでB-$OONっていうクルーを作ってラップする仲間を集めました。そのときにBMXは売って、「俺はラップするから」って。

—じゃあそこからは、ヒップホップ一直線?

R’kuma:そうですね。高1の夏休みに、沖縄市の『L-LINE(現・EQ)』っていうクラブに、1年先輩のラッパーのLotusと一緒に行ったら、高校生までの出演者がライヴで優勝を決めるっていうイベントだったんです。そしたら、ラッパーの鉄ちゃん(2016年にシングル「平成生まれ」でデビュー)が、優勝したんですよ。彼が同級生だって聞いて一発食らっちゃって。

—それは刺激になりますね。

R’kuma:それで、次の週にまたLotusと一緒に行こうってことになったんですけど、曲もできていないのに行く前の日に「明日ライヴやろう」っていって必死でリリック書いて、イベントに出させてもらったんです。お客さんも数人しかいなかったけど、それが初めてのライヴですね。

YouTubeで驚くほど反響があった“CoCo ga OKINAWA”

—その後、ライヴは定期的にやるようになったんですか?

R’kuma:『L-LINE』には毎週通ってライヴをやってました。そのうち、他のクラブにも行くようになって、いろんなところでイベントに呼んでもらったりするようになったんです。それで少しずつ名前が出始めました。

—そこからワンステップ上がったと感じたのはいつですか?

R’kuma:ラップを始めてから1年ちょっと後くらいの高2の秋に、“CoCo ga OKINAWA”というRude-αと一緒にやった曲をYouTubeにアップしたんです。もともとフリースタイルから生まれた曲で、北谷町の美浜で遊びで撮ったんですけど、それが驚くほど反応があったんです。Twitterも急にフォロワーが増えたりして、そこが1つの転機ですね。

—それからは?

R’kuma:高3になって東京に行った時、先輩に「遊びに連れてってください!」っていったら、(MC)バトルのイベントに連れて行かれて。最初は出るつもりはなかったんですけど、会場のピリピリした雰囲気に影響されて、自分もバトルしたくなったんです。それで出させてもらったら、2人の対戦相手を倒して「あいつ何者?」って騒がれて。その時の動画がYouTubeに上がって、一気に名前が広がったように思います。

知名度を上げるきっかけとなった『高校生RAP選手権』

—『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』に出ることになったきっかけは?

R’kuma:『高校生RAP選手権』って、年2回あるんですけど、高2の終わりの第7回(2015年3月)もその次の第8回(2015年9月)も予選で落ちたんです。「絶対俺の方が上手いのに」って思ってましたけど(笑)。その後2016年の年明けにはいろいろあって、卒業間際の2月に高校を退学したんです。正直ラップどころじゃなかったんですけど、第9回の『高校生RAP選手権』が最後のチャンスだと思って受けたら、受かったんです。これがダントツにでかい出来事でしたね。結果、一回戦で敗退したんですけど、すごい反応があったんです。

R'kuma

—テレビ出演で全国区になったわけですよね。

R’kuma:ただ、名前が売れることによって、いろんなしがらみが出てきて沖縄でライヴができなくなったり、かなり孤独な状況が続いたんです。でも、自分にはラップしかないし、やり続けるしかないかなって。そしたら、第10回の『高校生RAP選手権』がファン投票で、歴代の優勝者とか錚々たるメンツが選ばれる中で、ギリギリでしたけど一回戦敗退の俺が選ばれたんです。

—敗者にも関わらず支持を得て、18歳にして武道館のステージを上がったんですね。

R’kuma:第10回の『高校生RAP選手権』に出場できたことは、相当でかかったですね。武道館のステージも踏めたし。そして、その4日後が『フリースタイルダンジョン』(人気のMCバトル番組)の収録日だったんです。全然準備はできてなかったんですけど、選手権のノリでこちらも2回戦まで進みました。その後、テレビ放映されてさらに認知が上がったと思います。

—それだけ人気が出ても、CDなどのリリースはしていないですね。

R’kuma:実はメジャー・レーベルからも声がかかっていたんですけど、全部断ったんです。メジャーへの憧れはあるんですけど、先にデビューした先輩の話を聞くと、俺にはちょっと合わないなって思って。そんなときに、よく行く店の紹介で今の事務所の(川原)孝太さんと知り合って、環境が整っていきました。この間作ったPV”When U gon die?“からは、がっつりとプロデュースもしてもらっています。

自分なりのやり方で沖縄から世界に発信していきたい

—曲やリリック(歌詞)などは、精力的に作っているんですか?

R’kuma:基本、曲は作ろうと思っては作らないんです。遊んでいると、急に曲を作りたいって思って、その輪から離れて隅っこで曲を書き始めたりするんですよ。だから曲を作りたいときは遊びに行きますね。

—日々の生活から言葉が出てくるような?

R’kuma:そうですね。実際に見たこととか、会話の中のフレーズとか。今日この取材を受けていることもきっと曲にすると思う。ライフスタイルがそのままリリックになっていくんです。

R'kuma

—では今現在、どういった活動がメインなんですか?

R’kuma:実は、アルバムを作っています。これからジャマイカに行く予定なんですよ。現地のミュージシャンとコラボしたりして、いいものを作りたいと思っています。その後、ツアーをやることも決まっているし、スタジオも作るんですよ。

—スタジオ!? それはすごいですね。

R’kuma:今年から本格的に動き始めます。ただ、CDが売れにくい時代だから、普通にCDを出すのではなくて、いろいろと仕掛けを考えたい。他のアーティストとの違いをきっちりと打ち出したいし、新しいアイデアをどんどん取り入れたいですね。

—沖縄から東京などの県外に拠点を移して活動する予定はあるんですか?

R’kuma:たしかに東京に行ったほうが現場の数も多い。沖縄のCHICO CAITOやRude-αといった先輩ラッパーたちも東京ですごい活躍しているし、俺らの憧れでもあります。でも俺は、彼らと同じことやってもしょうがないし、そこは俺の役割じゃないと思って。

—話を聞いていると、沖縄のシーンがどうこうっていうことでもなさそうですね。

R’kuma:ラップを始めたときから、日本でやるってこと自体もあまり考えてないんですよ。俺のステージは世界だと思っているから、自分なりのやり方で沖縄から世界に発信していきたいですね。

R'kuma
R'kuma

Profile

R'kuma

1997年生まれ、沖縄県嘉手納町出身。高校1年でラップに目覚め、地元で「B-$OON」というクルーを結成。高校2年の秋にYouTubeで発表したRude-αとの“CoCo ga Okinawa”が話題になり、その名を知られる。その後、第9回と第10回の『高校生RAP選手権』、MCバトル番組『フリースタイルダンジョン』に出場。リリース音源が一曲もないのにも関わらず、ツイッターは4万人を超えるフォロワーを持つ。3月25日には那覇・桜坂セントラルで行われるイベント「1NSIDE-0UT」にも出演が決定。
https://twitter.com/iamrkuma

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