Special - Interview

抱腹絶倒のパフォーマンスで元気を届ける。パーティーダンサー・粒マスタード安次嶺とは?

ShuAshimine / 粒マスタード安次嶺

沖縄の結婚式に出たことがある人ならご存じだろうが、沖縄県の披露宴では半裸や変装した人が必ず余興をする。ときには、主役の新郎新婦よりも目立つなんてこともあったりして……。 そんな沖縄の慣習をエンターテインメントの領域にまで高めた男がいる。それが、通称“粒さん”こと、粒マスタード安次嶺だ。オールバックにヒゲ、そして赤いキャミソールと黒いパンツをトレードマークに踊るキレッキレのダンスは、YouTubeを通じて爆発的にブレイク。いまや沖縄県内のみならず、全国のパーティーにオファーをもらう売れっ子となった。エンターテインメントの世界に身を置く彼だが、一方ではShu Ashimine名義でイラストレーターとしても活躍している。沖縄発のマルチな才能はどのようにして生まれたのか? まずは冒頭の映像からお楽しみいただきたい。

フリーターの青年が、Shu Ashimine / 粒マスタード安次嶺になるまで

—幼い頃の粒さんって、やっぱりみんなを笑わせるタイプの子どもだったんですか?

粒マスタード安次嶺:わりと明るい子だったと思いますよ。テレビ番組「オレたちひょうきん族」の誰かのマネをしたりして、目立ちたがり屋だったかもしれないですね。

—その頃から今の仕事につながる記憶ってあるんですか?

粒マスタード安次嶺:イラストに関していうと、小中学生の頃は鳥山明先生が大好きで、『ドラゴンボール』の絵をひたすら描いていました。だから、絵の仕事はいまだにその延長線上です(笑)。それとディズニーが大好きでしたね。

ShuAshimine

—いわゆる王道エンターテインメントですね。もともとは漫画家になりたかったとか?

粒マスタード安次嶺:いや、そういうわけでもなかったんですが、とにかく絵は子どもの頃から今まで、ずっと描き続けているんですよね。でも、そういう仕事をしたいとかはあまり考えたことはなかったです。イラストだけで食べていけるなんて思ってもなかったですし。あ、あと、ダンスに関しては、高校生の時にDA PUMPさんが大好きで、ひとりでずっと踊ってたんですよ。

—それはウケ狙いではなく?

粒マスタード安次嶺:いやいや、本気でDA PUMPさんになりたいと思っていたんです(笑)。学校終わって近くの駐車場に行って、誰にも見せずひとりで踊りまくってました。歌番組も細かくチェックして。だから、僕のダンスの基礎はDA PUMPさんなんですよ。

—高校卒業後は?

ずっとフリーターみたいな感じですね(笑)。そんなときに「NEW TOWNER」というバンドを始めたんです。両親も「なにやってるんだ?」って感じだったでしょうね(笑)。もともと、沖縄を離れる友達のために、みんなでCDを作ろうと盛り上がって、それで作ったところ、内輪だけじゃもったいないからどこかのお店に置いてもらおうってことになって。そしたら後輩がラジオ番組をやってて、そこに出演することになったんですけど、ノリで「ライヴやります」って言ってしまったんです。そのCDは3人で作ったんですけど、ライヴやるにはメンバーが必要だってことになって、急遽人を集めて7人編成になって。そこから結局7年も続きました。
 
ShuAshimine

—そのバンドが今のパフォーマンスにつながっているんですか?

粒マスタード安次嶺:そうですね。他のバンドよりも、どうすれば目立つだろうってことばっかり考えていたんですよ。だからとにかく動いたり踊ったり。でもしっとりとした曲でも踊っちゃうからメンバーに怒られたりして(笑)。DA PUMPさんを踊りまくっていた高校時代の経験がそこで活かされましたね。あと、イラストに関しては、当時「hands」という沖縄の音楽雑誌があって、NEW TOWNERでコラム連載をしていたときに、挿絵も描かせてもらったんですよ。それが最初の仕事みたいなものですね。

—そこでようやく、イラストレーターShu Ashimineが誕生したと。

粒マスタード安次嶺:そうですね、でも本格的に始めたのは7年間やっていたバンドが解散してからです。同じバンドのドラマーもデザイナーだったので、彼とその友人のイラストレーターと3人で展示会やったんですよ。それが最初ですね。そのときは、「名刺も作ったし、これでイラストレーターだ!」という安易な考えでしたけど(笑)。

きっかけはたまたま、友人の結婚披露宴の余興で

—粒マスタード安次嶺としては、いつから活動を始めたんですか。

粒マスタード安次嶺:バンドを解散して1年くらい経った2010年からです。たまたま友達の披露宴の余興で踊ったことがきっかけです。最初はバンドで出てくれって言われたんだけど、すでに解散していたから、とりあえずひとりで踊ってみようと。実は、バンドの時も一度ライヴで同じようなことをしたことがあるんですよ。(バンドとバンドの)転換の時に、メンバーからなんかやれって言われて、お母さんにレオタード借りて踊ったのが今の原型です(笑)。それで、披露宴の余興の時にまた衣装を借りようと思ったら「もう捨てたよ」って言われて、あわてて買いに行ったのが今の赤と黒の衣装。だから、とくに考えたわけでもなく、とにかくピッチリしてるやつを選んだって感じで(笑)。

ShuAshimine

—そこから広がっていくわけですよね。

粒マスタード安次嶺:そのときに友達がビデオを撮って、YouTubeにアップしてくれたんです。そしたら「踊ってよ、っていう問い合わせ来たけど、どうする?」って。それで初めて仕事として結婚式の二次会で踊りました。だからその友達のおかげで、粒さんを始める事が出来た感じです(笑)。ほんとにこれまで、周りの人が全部決めてくれて今があるんですよ。

—粒さんの人柄に人が集まってくるんでしょうね。ところで、「粒マスタード」という名前の由来は?

粒マスタード安次嶺:これまたバンドのメンバーが付けてくれたんですけど、そのときは特に意味がなかったそうなんですよ。でも、こうやって取材を受けるようになったら何か答えないといけないと思って、「なんで粒マスタードなの?」って聞いたら、「“あなたの人生にほのかなスパイスを”、でいいんじゃない?」って(笑)。めちゃくちゃ後付け感全開だし、やっぱり自分発信じゃないんですけど。

—とは言え、順調にパーティーダンサーとしての地位を確立していったんですよね。

粒マスタード安次嶺:最初の2、3年くらいは「お前、誰?」っていう感じでした。披露宴の司会者の人も「YouTubeでお馴染みの!」とか言ってくれるんですけど、誰も知らないじゃないですか(笑)。だからなんとかして盛り上げようと頑張りましたね。

世界的ダンサー・仲宗根梨乃に認められる

—ステップアップしたと思えるのはいつ頃ですか。

粒マスタード安次嶺:「琉球ばくだん」というサプリのCMに出させてもらったんです。それに出たら、問い合わせがどんどん増えてきて。それであわてて友達にホームページ作ってもらったら、東京とか名古屋とか県外からも踊ってくださいっていう話が来るようになりました。

—MONGOL800などミュージシャンとのコラボレーションも増えていますが、そのきっかけは。

粒マスタード安次嶺:モンパチは高校の後輩なんですよ。だからバンドやってる時から付き合いがあったんですけどね。さすがに依頼があった時はビックリしました。

—宮本亜門さんが演出、仲宗根梨乃さんが振付という舞台「TEE!TEE!TEE!」にも出演されましたよね。

粒マスタード安次嶺:これもオーディション番組「X Factor」の沖縄版がきっかけでした。そのときは、審査員が(仲宗根)梨乃さんだったんで、めちゃくちゃ緊張しましたよ。だって、世界で活躍するダンサーじゃないですか。

—一世一代のチャンスだと。

粒マスタード安次嶺:いや、それよりも僕はそれまで結婚式の余興でご依頼頂いて踊っているんです。それなのに、もしその場で梨乃さんにボロクソにいわれたら、これまでに踊らせてもらった人たちに顔向けできない。でも結果的にはすごく気に入ってもらえて、それがきっかけでオーディションに行かせてもらい、舞台にも出させていただきました。

7分6秒の時間内で、魂を削って踊り、相手を喜ばせる

—ダンスのレパートリーはいろいろあるんですか?

粒マスタード安次嶺:いや、無いんです(笑)。最初に結婚式でやった踊りを、6年くらいかけて改良していっているだけです。ある意味もう、古典みたいなもんです(笑)。実は5パターンくらい作ったんですけど、やっぱり一番最初に踊ったものがいちばんいいね、っていう話になって。結局そのパターンをひたすら細かいところを直しながらブラッシュアップしています。

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—1ステージの持ち時間は?

粒マスタード安次嶺:7分6秒ですね。アンコールがあったら、2分53秒加えるというパターン。これが1パッケージです。だから、「30分やってください」て言われても、難しいので断るしかないんです。ただ、今度芸人さんのイベントに出させてもらうんですが、そういう時は15分くらいのパッケージを作ろうと思っています。

—パフォーマンスをする時に意識していることってなんですか。

粒マスタード安次嶺:いやもう、出るからにはとにかく盛り上げたいということ一心ですね。出るまではホント緊張して「帰りたい」っていつも思ってます。だって、結婚式に呼ばれる時ってたいてい部外者じゃないですか。僕が踊ることで、新郎新婦の友人の余興枠がひとつ無くなっているわけですよ。だからその人たちも納得させるために、めちゃくちゃ集中して盛り上げることに必死です。

—うまくいかなかったこともあるんですか?

粒マスタード安次嶺:結婚式っていろいろハプニングがありますよね。野次が飛んできたらどうしようとか。だから、そういった場合の対応はいつも考えています。でも以前、佐賀県で踊ったときに、裸の人が乱入してきたんですけど、その状況は想定していなくて頭が真っ白になって悔しかったですね。持っていかれた!って(笑)。今はもう、裸だろうがなんだろうが、どんなハプニングが起きても動じない自信はありますよ(笑)。

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—おそらく、粒さんのダンスを観て元気になったという人もたくさんいると思うのですが、ご自身ではパフォーマンスを通じて何を伝えたいと考えていますか。

粒マスタード安次嶺:自分で踊った動画を見ると、自分じゃないという感覚なんです。「面白いなあ、この人」っていう感じで。だから、自分にとっての粒マスタード安次嶺というのは別キャラみたいな感じなので、とくにメッセージとかはないんです。とにかく面白がってもらえればいいというか。ただ、誰でも本気になって頑張れば、誰かがきちんと見てくれる。そんなことが、この踊りを見て感じてもらえたらいいなあと思います。あとは、魂を削ってとにかく盛り上げてその場をひとつにしたい、ということでしょうか。

—沖縄発という意識も強いんでしょうか?

粒マスタード安次嶺:粒さんは、周りの友達が作ってくれたものでもあるけど、そもそも沖縄の披露宴の余興文化がなかったらいないですからね。沖縄なくして粒マスタード安次嶺は存在しないと思います。

—イラストレーター・Shu Ashimineとしてはどうでしょうか?

粒マスタード安次嶺:さっき言ったとおり、粒さんとイラストレーターのShu Ashimineは別モノなんですよね。この前、LINEスタンプの第二弾を作ったんですが、これには強いメッセージがあって。最近、中高生のLINEグループでのいじめが問題になっているというニュースを見て、そのいじめ撲滅に使えるものを作ろうと思ったんです。スタンプで円滑にコミュニケーションできるといじめもなくなるんじゃないかなって。少しでも僕のスタンプで助かったと思える子どもがいたらいいなと思うんです。

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—今後、粒さんとしての目標はなんですか。

粒マスタード安次嶺:「TEE!TEE!TEE!」のような舞台を経験したり、ガレッジセールさんの沖縄新喜劇などにも出させていただいたんで、そういう舞台もどんどん挑戦していきたいですね。もちろん沖縄だけでなく、県外や海外でも頑張りたいという気持ちもあります。観てくれる人がいるうちは、がむしゃらに頑張ろうと思っています。いつでもパーティーがあったら盛り上げたく思います!

Information

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粒マスタード安次嶺
NICE group.

ShuAshimine / 粒マスタード安次嶺
ShuAshimine / 粒マスタード安次嶺

Profile

ShuAshimine / 粒マスタード安次嶺

幼少期にドラゴンボールに魅せられて絵を描き続け、 2010年にイラストレーター活動を始める。 2002年~09年まで続けたバンドNEWTOWNERの経験を活かし 【粒マスタード安次嶺】という名で披露宴を中心にイベント・TV等に出演。
http://ashimine.com/

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