Special - Interview

東京から沖縄へ。あえてイバラの道を選んだHYが地元を語る。

HY

沖縄発、押しも押されもせぬビッグバンド『HY』。いまや沖縄に留まらず、全国で知らない人はいないだろう。紅白出場から、CMソング、ドラマの主題歌起用など、彼らのリリースした数々の楽曲は、誰もがどこかしら何かしら耳にしたことがあるはずだ。
そんな彼らが、自主レーベルを立ち上げ、さらに地元沖縄を本格的な活動拠点としたのが2013年のこと。何故、彼らは「さらなる成功」があったかもしれないレールを外れ、自ら険しい道を選んだのか? そこに至るまでの葛藤と今後の希望、そして地元沖縄への想いを聞いた。

30歳を目前に、「攻め」に入りたかった。

—HYは沖縄を代表するミュージシャンですし、お茶の間の誰もが知っている存在です。

名嘉:ちょっと、持ち上げ過ぎじゃないですか……(笑)。

—いえいえ。ただ、ここ何年かで自分たちでレーベルを立ち上げたりするなど、かなり考えや環境の変化もあったかと思うんです。その辺についてもお話し聞いていきたいので、よろしくお願いします。

一同:よろしくお願いします!

—2013年に自主レーベル「ASSE!! Records」を立ち上げたんですよね。

名嘉:はい。「ASSE!! Records」の「アッセ」は、僕らの地元の言葉で、びっくりした時とかに使う言葉なんです 。ワクワク・ドキドキするような音楽を届けたいという思いを込めてつけました。

(左より)キーボード・ボーカル:仲宗根 泉 ドラム・ラップ:名嘉 俊 ギター・ボーカル・ラップ:新里 英之

(左より)キーボード・ボーカル:仲宗根 泉 ドラム・ラップ:名嘉 俊 ギター・ボーカル・ラップ:新里 英之

—これはどういった経緯で立ち上げたのですか?

名嘉:これまで10年以上音楽と向き合って来ましたが、今があるのはもちろんメンバーだけの力ではなく、スタッフ、家族、ファンなど、様々な繋がりがあってこそなんです。なおかつ、これから先、音楽を発信し続けていくにあたって、「環境」はやっぱり大事だなと。それまでは、10年くらいずっとレコーディングなど東京でやって来たんですが、これを機に沖縄でやろうとなりまして。

—東京ではなく、沖縄に選んだのはなぜ?

名嘉:もっと自分達らしく、音楽と向き合いやすい環境を目指したかったんですね。僕らが沖縄出身ということもあるんですが、これから先、自分達が本当にやりたいことを、沖縄でしっかりとレールを敷いてつくっていきたい。そういう想いが強くなって。ただ、環境もなにも揃っていない所から始めたんで、当初はすっっ…ごく大変でしたけど(笑)!

—あえてイバラの道を選んだ、と。

新里:そうですね。東京ではたくさんのスタッフに囲まれて、環境自体はすごく良かったんですが、その環境に安住するわけではなく、あえて攻めに入るというか。より「自分たちらしさって何だろう?」って、考えたときに、今まで積み重ねてきた経験が自信につながるタイミングでもあったんです。

名嘉:東京の環境に感謝すると同時に、自分たちを見つめ直すと、これでいいのか? と。このままいって、40代の自分達がイメージできなかったんです。だから、ガンガンやれる今、20代、30代の若いうちに、原点を見つめ直してどれだけがむしゃらになれるか。その答えの一つが自分たちでレーベルを立ち上げることだったんです。

沖縄のストリートから生まれたHYの原点はライブ。

—実際の活動についても聞いていきたいのですが、HYはライブが多いバンドですよね。

名嘉:ライブは大好きですね。元々、沖縄でストリートライブから始まったバンドでもあるので。今までも、1年間で最高162本やったりと、ライブは僕らの原点でもあります。

—162本! そんなに……。

仲宗根:HYのライブを見たことがない人達って、昨年出たアルバム『LOVER』のようなバラードっぽい、静かなイメージが強いみたいなんですが、ライブに来ると、こんなバンドなんだ! ってなるんです。きっと多くの人が思っているHYと、ライブのHYは全然違うはず。ものすごくハードに汗をかいて、カラダを動かすバンドですからね。

(左より)ベース:許田 信介  ギター:宮里 悠平

(左より)ベース:許田 信介 ギター:宮里 悠平

—客層もやっぱり若い人が多いですか?

名嘉:多いですけど、徐々にお客さんも僕らと一緒に年を取っている感じはしますね。最近よく、子ども産まれました! とか聞きますし。昔からのファンの方々とも一緒に成長しているって感じですね。

—そうなんですね。もっと若い、中高生が多いイメージでした。

名嘉:そうでもないですよ。ただ若いファンの方も、僕らくらいの年齢層のファンの方も年齢問わず一緒に歩んでいきたいですね。前に若いファンの子に聞いたら、HYのライブより、嵐の方がよかったって言われて悔しかったので(笑)。

一同:(笑)。

「世界に伝わるグローバルなものって、ローカルなものだと思うんですよ」

—2014年にリリースしたアルバム『GLOCAL』にもあるように、テーマは 「More local, More global」。沖縄から世界へ、ということなんでしょうか?

名嘉:以前からそのテーマはあったんですが、しっかりド真ん中において突き進んでいこう! となったのは、レーベルを立ち上げる前くらいですね。やっぱ地元って大事じゃないですか。沖縄に帰ってきて、改めて地元の良さを分かるようになりました。ほんと何気ない湿気が気持ちよかったり、母親の料理とか、家の臭いとか…….。結局、世界に伝わるグローバルなものって、ローカルなものだと思うんですよ。沖縄の文化を、胸を張って伝えていきたいです。

—近年は、HY主催のフェスも開かれているそうですね。

宮里:そうです。『SKY Fes』といって、僕らの地元である、うるま市でやっています。もともとは、これから未来を担う子供達に、自分達が何を残せるかというところからスタートしたんですが、実際にやってみると、僕たち自身が学ぶことが多くて。地元の小学生から大人まで、みんなが主役となって、一緒につくりあげているかんじです。

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許田:地元の小学生の合唱であったり、エイサー(沖縄の伝統芸能の踊り)であったり、あとは、石垣の三線奏者のステージだったりと、これまでに受け継がれてきた沖縄の伝統芸能の大切さを多くの人達に伝えられるように、一体となってやっています。それから若手のことももっと知ってもらおうと、公募で若手バンドにも出てもらっています。みんなの協力あっての『SKY Fes』ですね。

—HYが沖縄発だからこそ、ですね。

名嘉:やっぱり地元を盛り上げたいっていう気持ちがみんなにある。だからこそ地元で頑張る人達をフィーチャーすれば、もっと自分の地元に誇りを持って、それぞれの次のステップにつながっていくのでは、と思っています。

ネット時代だからこそ、目の前の一人にちゃんと届く音楽を。

—アクティブな活動がありつつ、ファンや楽曲など、様々な変化もあるんだと思うのですが、ファンから求められるHYと、自分たちがやっていきたいHYの間にギャップはあったりしませんか?

新里:ファンの年齢は、最近意識するようになりましたね。これまでは、その時々で思っていることや感情を歌にしてきたんです。僕たちの若い頃は、悲しい、嬉しい、寂しいとか、結構単純だったんです。でも今は違う。ネットありきのコミュニケーションが前提になっています。顔を合わせずに話もできるし、匿名であっても凄い力を持っていたりするし。そういった中で、自分たちがどれだけやっていけるかが勝負。本当に「悲しい」だけでも、いろんな伝え方がありますしね。

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名嘉:むずかしいよね……。

—その中で、どうやってコミュニケーションをとっていくかと。

新里:すべてがネットの時代の中で、音楽ってなんだろう? って、常々考えています。もちろん、そこにはっきりとした正解はないし、めちゃくちゃ難しいんですが、自分達も勉強しつつ、やっていくしかないと。

—ある意味では、ごまかしがきかない時代なのかもしれませんね。

新里:そうですね。だからこそ、伝えたい気持ちに嘘なく、がむしゃらに、まんまを出さないといけないな、と思ってます。

名嘉:全ての曲がみんなに届くとは思っていないけど、あくまでも、「一人称」に対して届けていくというか。それを何万人にも届けていくのが、音楽だと思っているので。

—目の前の人に届けることは変わらないと。

名嘉:そうなんですよ。だからそこで臆病になっててもダメなんです。ガンガン攻めていかないと。失敗はしても、その中で学ぶべきことは、確実にありますから。葛藤はしつつも、進んでいく。それが今のHYなのかな、って思ってます。

新里:時代が変わっていく中で、どう変化して、進んでいくか。それは、沖縄に戻ってきて、余計に自分たちのことを見直すこともあり、考えるところですね。

友だちから出発した音楽の輪をこれからも。

—今年は結成15周年でもあるそうですね。

仲宗根:今年はどんどんライブをやりたいと思ってます。この1月から2月は『LOVER』を引っさげての『Kana-yo Premium TOUR 2015』、6都市11公演です。その後、秋口は新しいアルバムに合わせて、計40本の全国ツアーを予定しています。

—ニューアルバムも! ますます活動が楽しみですね。

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名嘉:沖縄を盛り上げていくと言っても、僕らももっと沖縄を知っていかないといけない。それは沖縄の伝統もそうだし、若いバンドのことも。もっと積極的に発信して、地元と繋がっていこうと思います。

—より、開いていこうと。

新里:そうですね。僕たちは常にファンのみんなとの距離を意識してやっています。親しみやすいフレンドリーな、ゆっくり優しく心を開きながら、楽しんでいけるような、そんなバンドを目指してきました。それはなにより、僕ら自身のことでもあって。僕たちはバンドを組む前から友達だし、結束はどこよりも堅いと思うんです。そんな僕らからにじみ出るものによって、ファンのみんなとの空気感を作っていって、これからも僕たちの楽曲や活動にワクワクしてくれる人が増えていったら嬉しいです。

Information

2015年1月27日から全国6都市11公演ライブハウスツアー「HY Kana-yo Premium TOUR2015」開催予定。
2015年秋、全国ホールツアー開催決定。詳細はHYオフィシャルホームページにて。

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Profile

HY

2000年結成。 沖縄県うるま市出身。グループ名の「HY」は、彼らの地元・東屋慶名(Higashi Yakena) の地名が由来。
現在も沖縄に在住し、全国・世界へと音楽を発信している。2014年12月に10枚目のアルバム『LOVER』をリリースし、今まで3度の全47都道府県を回るライブツアーや、全国アリーナツアーを敢行。
2007年には、初の海外ツアーや2010年、2012年末にはNHK紅白歌合戦に出場。幅広い世代に届く楽曲と、親近感溢れるライブ活動で多くのファンを魅了する彼らは2013年夏、沖縄にて「ASSE!! Records」を設立した。more local , more globalに沖縄から世界に向け、活動する彼らは、2015年、結成15周年を迎える。 http://hy-road.net/

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