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沖縄の伝統芸能・組踊とは? 組踊を楽しむための5つのポイント

優雅な古典音楽のしらべに乗って、美しい衣装を身に付けた役者が、艶やかに舞いながら物語が進行していく……。それが、琉球文化を代表する伝統芸能であり、沖縄が誇る総合芸術の頂点、組踊(くみおどり)。2010年にはユネスコの無形文化遺産のリストにも登録されたこともあって、県内外で徐々に組踊ファンが増えてはいるものの、「伝統芸能」というだけにちょっぴりハードルが高いのも事実。どこに行って、どういう演目を観て、どのように楽しめばいいのか。そう考えた時に敬遠してしまう人もいることでしょう。しかし、食わず嫌いはもったいない! ここでは、初心者でも組踊を楽しめる5つのポイントを紹介しておきます。

組踊って何だ?

本題に入る前に、組踊とはどういうものなのかを少しお勉強しておきましょう。琉球王朝が繁栄していた18世紀の初頭。中国と密な関係だった琉球王国のお役人は、冊封使(さくほうし)と呼ばれる中国からの使者をどう接待するか考えていました。その時に、踊奉行(おどりぶぎょう)という今でいうエンタメ係になった玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)は、日本の歌舞伎や中国の古典演劇である京劇などからヒントを得て、組踊という総合舞台芸術を作り上げます。

最初に上演されたのが1719年なので、その歴史はおよそ300年。この当時から演じられている作品はもちろん、昨今ではオリジナルの創作組踊も積極的に作られ、若い才能も数多く集いながら、組踊を取り巻くシーンが少しずつ活性化しています。とはいえ、組踊初心者にとっては、何をどう観ていいのかわからないのも事実。沖縄が誇る組踊について、今回は入門編として簡潔に見どころを解説してみましょう。

ポイント1:物語の流れを知る

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まず頭に入れておきたいのは、演目のストーリーです。これは、歌舞伎やオペラでも同じですが、ある程度前知識を入れえおいたほうが、深く楽しめるはず。たいていはシンプルな物語なので、ざっと登場人物と全体の流れを知る程度でいいでしょう。

有名な演目でいえば、「二童敵討(にどうてきうち)」で、父を殺された二人の息子が磨いた芸を披露している隙に敵を仇討ちする話。また「万歳敵討(まんざいてきうち)」も、シチュエーションは違えど、似たパターンの仇討ちものの演目。

そして組踊の定番ともいわれる「執心鐘入(しゅうしんかねいり)」は、泊めてもらった家の女からの求愛を拒んで逃げたところ、鬼になって追いかけられるというストーカーの物語。「銘苅子(めかるし)」なんて、いわゆる日本各地に存在する羽衣伝説そのままで、「かぐや姫」や「鶴の恩返し」にも通じる大定番。そこに、沖縄特有のエッセンスが振りかけられているのです。

ポイント2:衣装に目を見張る

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組踊は、総合舞台芸術ではありますが、舞台上のセットは至ってシンプル。特別凝った舞台装置はありません。その分、演者たちが着る衣装はとても華美で目を見張ります。

とくに女性や若者の役は、沖縄伝統の染物である紅型を使った衣装が多く、色合いや柄をチェックするのも楽しいものです。逆に、男性の王様や役人は、金糸で縫われた重厚な着物姿や、身分の高さを表す頭巾(ずきん)、そして歌舞伎のような隈取(くまどり)のメイクをすることもしばしば。それぞれの登場人物の服装や装飾をチェックするだけでも、組踊は楽しめるかもしれません。

ポイント3:お気に入りの俳優を見つける

もちろん例外もあるのですが、基本的に伝統的な組踊の出演者は男性。女性の役も男性の女形(女性の役を演じる役者)によって演じられるのが通例です。そのため、組踊のファンには女性が多いのも納得。

佐辺 良和©大城洋平

佐辺 良和©大城洋平

以前、RQ+のインタビューページにも登場していただいた佐辺良和さんを筆頭に、若手の俳優も続々と活躍し始めているので、自分好みの俳優を見つける楽しみもあります。また、ひとりの俳優に注目すると、その人がどのような役柄を演じるのか、少しずつわかってきます。そうすると、さらに組踊への理解が深まることでしょう。

ポイント4:琉球舞踊の優雅な世界に見とれる

組踊のいちばんの特徴といえるのが、舞踊かもしれません。音楽に合わせて舞い踊るのはもちろんですが、ちょっとした所作もすべて琉球舞踊をベースにしています。たしかに、舞台を見ているとすべての動きが優雅で美しく感じるはず。ひとりで舞うだけでなく、複数人で同じ動きをする姿も圧巻。豪華な衣装と相まって、組踊全体に大きなリズムを作ります。

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また、立ち位置や身振り手振りもひとつひとつに意味があり、喜びや哀しみといった感情表現なども踊りによって表現していきます。泣いている時、戦う時など、その場その場での動きの意味を知れば、さらに組踊が面白くなることでしょう。

ポイント5:琉球古典音楽の調べに癒やされる

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舞踊と切り離せないものが、音楽です。組踊はいわゆる琉球古典音楽が用いられ、一般的に沖縄音楽として認知されている民謡などは使われません。そして、唄と三線をメインに、太鼓、琴、笛、胡弓(こきゅう)といった楽器も使用されます。これらを演奏するの人々は、地謡(じうたい)と呼ばれ、物語を進める重要なストーリーテラーでもあります。なので、唄だからといって聞き逃さないように。また、琉球古典音楽は比較的抑揚が少なく、まったりとした印象があります。唄三線が奏でるメロディや、何度も繰り返される楽器のフレーズに癒やされてください。

組踊の観覧場所、上演情報は?

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組踊に興味を持っていただけたでしょうか。しかし、エイサーや民謡と違って、組踊はどこでも観られるというわけではありません。もし最初に組踊を体験するなら、まずは浦添市にある『国立劇場おきなわ』がおすすめ。広く見やすいホールには字幕も完備され、実力派の俳優たちが毎週末のように人気プログラムを演じています。中には古典の組踊だけでなく、独創的な新作組踊や、子どもたちにもわかるような入門編のプログラムも定期的に行っています。

そんな組踊のイベント情報は、RQ+でも随時発信中。ぜひ、沖縄滞在での週末は、国立劇場おきなわへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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